検索フォーム

丹後の日記

アカミノハリガネゴケ Bryum atrovirens編集する
2009年09月12日17:43全体に公開
4 view
以前,ツリガネゴケ属の不明種ということで日記に書いたもの。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1201052948&owner_id=2651499

その後,「ツリガネゴケ属ではあり得ない」という結論を出したが,依然として行先が分らず,葉形の似ているヒメヒョウタンゴケ属 Entosthodon に仮に置いていた。何故かシマヒョウタンゴケ E. wichulae は隠岐に産するが,それと同じもの?と思ったわけでは全くない。

その後,「ヒョウタンゴケ属 Funaria とも違うし・・・」などといじくりまわしていて,大きな無性芽が仮根上についていることに気付いた。今までは土に隠れていたようだ。無性芽(Rhizoidal gemma,塊茎 = Tuber)は,径 0.2mmに達する大きなボール状で,仮根の途中にぶら下がっている(柄がある)。結構あちこちにあるので「無性芽がある」のが普通なんだろうと思う。こぼれ落ちそうになりながら葉腋に(1個ずつ)挟まれていることもある。色は仮根と同じワインレッド,時に黄色っぽいのも混じる。

この無性芽の迫力に圧倒されて,これは大変だと思った。調べてみたがヒョウタンゴケ科の中に仮根上の無性芽を持つものはないようだ(ごく特殊な例外を除く)。ということは,最初の予感通りハリガネゴケ属 Bryum か。「仮根上の無性芽」で捜したら日本産のものでは,本種のみが引っかかった。ところが,葉の形が違いすぎる。下半部がはっきり狭くなって舌形に近い形だし,何よりも図鑑に言う「葉縁は上部に小歯があり,下半部で強く反曲」とは完全に違う。「舷は黄色で明瞭」という感じもしない。

「独力では同定ができない」という判断で,秋山先生に見ていただいた。
> 葉はBryum属のものですので,特殊な無性芽を持つことから
> アカミノハリガネゴケ Bryum atrovirens
> だと思います.
> お送りいただいた標本では葉基部が狭まる傾向が強く,また葉縁は平坦になっていますが,
> 以下のように種の取り扱いが難しい種群なので,変異の幅なのではないかと推測します.
> 上記学名も,厳密にはさらなる検討が必要です.

それほど悩んではおられない。しかし,今調べて気付いたのだが葉身細胞の大きさが決定的に異なる。Noguchi (1988) によると,「42-60×13-17μm」だが実測値は,70-100×18-23μm。これは面白いことになった。と言っても打つ手もない。とりあえずは「もっと採集を」。

あるいは欧米の文献で,「仮根上に球形の無性芽を持つ」ものを全部チェックしてみるのも良いかもしれない。日本とは事情が違うようで,Bryum erythrocarpum complex (アカミノハリガネゴケ複合体)と称し 10種近い種が挙げてある。まだ十分解明されいないようなことも書いてある。


---------------------------------
 花野径 ローランサンの 少女来る        高橋悦男
 みなうなじ 吹かれてをりぬ 花野中       伊藤敬子
 立てば海 座せば空ある 花野かな       松本ヤチヨ


コメント

丹後

close
  • 絵文字

利用規約および個人情報保護ページに同意のうえ投稿してください。

日記を書く

友人の最新日記

<2009年09月>
  12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930   

日記の使用状況

0.8MB/2000.0MB