前の日記(7/25)を読んだ感じでは,同定にかなり自信を持っているようだ。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1235722467&owner_id=2651499
ところが 9/1に別の島で,他の蘚(コシッポゴケ Blindia japonica)の中に,シメリイワゴケ Dichodontium pellucidum と一緒になって混生している本品に出会った。そして “前回の同定時にシメリイワゴケが全く念頭になかった” ことに気付き,急に不安になってきた。実は過去に,シメリイワゴケを早まって本種と混同していたイヤな記憶がある。
たまたま今回は,成長段階の差でシメリイワゴケが小さかったのと(葉の大きさ 1/2),本品の中肋がオレンジ色を帯びていたので,楽により分けることができた。しかし,同定結果への確信は消えたので,改めて両種の差異を考えてみた。ところがこの 2つは何から何まで実によく似ている。生育環境・基物・大きさ・縮れ方,も含めて。近縁種ではないのが不思議なくらいだ。もちろん,別科なので胞子体は全然別のはず。
しかし,両方の葉を並べて検鏡してみると「確かに違うものだ」という気はする。これは一点の疑いもない。違いをうまく言えないが,無理して書いてみる。 (⇒ シメリイワゴケ)
(1) 本種は葉面が明るく,細胞の境界は全域で極めて明瞭。 ⇒ 葉の上半部は暗く,部分的に境界も見にくいことがある。
(2) 葉細胞の腹面のみに不明瞭なマミラがある。 ⇒ 背腹両面に明瞭なパピラがある。特に葉身上部で顕著で,切片を作らなくても十分確認が可能。
(3) 中肋背面上部は(ほぼ)平滑。 ⇒ 表皮細胞が突起化し著しくザラつく(必ず)。
(4) 葉縁は全縁。縁(ふち)にごく微細なパピラが光って見える程度。 ⇒ 葉縁上部で辺細胞が突出(鈍三角でしばしば透明化),縁がでこぼこザラザラ(ガサガサ)になる。決して全縁ではない。
(5) 無性芽は無い? ⇒ 葉腋に大量の無性芽をつけることがある。
(6) 中肋は常に,多少とも黄色〜オレンジ色。 ⇒ 通常は色づかない(と思う)。
(7) 葉形は必ず舌形で,基部と葉先部の幅が同じ。スラリと長い印象。 ⇒ 鈍頭ではあるが,葉先に向って幅が狭くなる。はっきりした舌形にはならない。
(4) が一番分り易くて良い,合言葉は「葉先に注意!」。ここまで来て,やっと新しい種を知ったという実感が湧いてきた。かなり珍しいものではないかと思う。
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晴るる日は 晴るる日の音 落し水 後藤比奈夫
人ひとり 通はぬ道の 落し水 八染藍子
落し水 もぐらの穴に 鳴りにけり 向久保貞文
小川の転石の水際で、たまにハマキゴケ(無性芽あり)を見かける事があるのですが、まさか別の種類と勘違いしていないだろうかと不安になります・・・
平凡社図鑑の検索表にある「中肋腹面の表皮細胞」の形が重要です。ネジクチゴケを沢山観察する必要がありますが,確かによく似たものがありそうなので要注意です。私も初期の頃ケネジクチゴケ?と思った標本がありました(乾燥したコンクリート上)。
> 小川の転石の水際で、
あまりハマキゴケの出て来ない環境ですが,無性芽のある種は限られて来ます。トウヨウネジクチゴケはどうでしょうか。しかし,ハマキゴケは葉の形としおれ方が独特です。