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丹後の日記

オオヒラツボゴケ (3) Ectropothecium zollingeri編集する
2009年08月12日22:02全体に公開
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現地ではカガミゴケ Brotherella に近い何かと思ったが,種名が言えないので持帰った。やや平たく葉がつき光沢も感じられた。胞子体に違和感があったが「成長不良」ということにしていた。

しばらく放置していたのだが,検鏡のため葉を剥がそうとしてアレッ!となった。ナガハシゴケ科 Sematophyllaceae の種はピンセットで挟んでしごくと,何の抵抗もなくツルツルと葉が外れる。本品は強く引張らないと葉が取れない。ということはナガハシゴケ科ではない。中肋は 2叉して比較的長く,〔朔〕は直立ではない。ツヤゴケ科でもないし,葉身細胞の幅が極端に狭く(3-4μ)サナダゴケ科でもない。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=492177536&owner_id=2651499
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=892420557&owner_id=2651499

今回は 3度目の採集であるが,またハイゴケ属 Hypnum を当った。葉がはっきり鎌曲りするからである。平凡社の図鑑では「鎌曲りしない」ことになっているが,これは言過ぎであろう。(1) 葉先が楔形で鋭くは尖らない,(2) 翼部が分化するようなしないような妙な葉基部,(3) 翼部の両端に 1個の巨大な細胞(透明薄壁),あるいはその壊れたものらしいのがついていることがある,を使って Hypnum を否定する方向でチェックした。Hypnum ではないことがはっきりすると同時に本種のことを思い出した。ハイゴケ科には多くの属があるが他に紛らわしいものはない。

今回特に印象に残ったのは特異な胞子体の様子である。ひと言で言えば「ごく小さくて弱々しい」。特に,〔朔〕柄が目に見えないほど細く,それがくねくねとよれる。〔朔〕柄: ±10mm,〔朔〕: to 1*0.6mm。なお,口縁下部が強くくびれる場合と,全くへこまない(平凡社図鑑の図)場合がある。他にも,葉身細胞の様子や葉先の尖り方など,変化が多いので一つの形質に固執しない方がよい。

5年間歩き回ってやっと 3例目,隠岐では珍しいものに違いない。胞子体の熟する真夏(7月下旬〜8月),水が滲むような岩崖や砂質土壌が狙いめである。渓流のそばではあるが渓流内ではなかった。近縁のニブハタケナガゴケ E. obtusulum のように,「水に浸たる・水を被る」というほどではない。


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 ものはみな 歓びかはす 炎暑かな     中園和霧
 ひそやかに 栗育ちをる 酷暑かな      阿部みどり女
 暑き日の 電柱と愛 細りゆく         津沢マサ子


コメント

  • 丹後

    丹後2009年08月13日 18:39 削除
    【自己レス】

    昨日,自宅近く(3km)の小さな流れでイワナガハシゴケ Sematophyllum demissum の積りで採ったものがやはり本種だった。(1) 葉はあまり扁平につかず,(2) 鎌曲りも少なく,(3) 〔朔〕柄: ca. 1.5cm,〔朔〕の長さ: ca. 1.5mm と大きめ。確かに変化のある種だ。

    > 特異な胞子体の様子
    濡れている時はあまり感じない。〔朔〕柄も真っ直ぐ。特徴は乾いた時,特に標本で顕著に現れる。

    胞子体がないものでは,茶色を帯びて(小型の)オオベニハイゴケ Hypnum sakuraii と間違えそうなものがある。翼部がはっきり違うのだが慣れないと勘違いする。もっとも,オオベニハイゴケにこんな小型があるかどうか・・・。

    > 隠岐では珍しいものに違いない。
    少し怪しくなってきた。4度目の産地は今までとは別の小さな島。浅い山の海辺( 10m alt.)のせせらぎ,ナンヨウトゲハイゴケ Wijkia hornschuchii に接してあった。ナンヨウトゲハイゴケはそんなに稀ではない。

丹後

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