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丹後の日記

オソレヤマヤバネゴケ (3) Cephaloziella divaricata編集する
2009年07月24日14:25全体に公開
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http://mixi.jp/view_diary.pl?id=129775066&owner_id=2651499
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これが 3度目の日記になるが,今までの標本と少し違うのでもう一度調べることにした。

本種の属するコヤバネゴケ科はヤバネゴケ科 Cephaloziaceae との区別が難しい。特にヤバネゴケ属 Cephalozia が気になるが,立派な腹葉があるので無視できる。残りの他の属は皆個性が強く(分布も含め)簡単に抹殺できた。残るのは同一科のツクシヤバネゴケ属 Cylindrocolea だが,ツクシヤバネゴケ C. recurvifolia はよく知っている種ではっきり違う。よって,科と属に問題はない。

コヤバネゴケ属 Cephaloziella は日本産 10種となっているが,全部の種が形態・分布とも非常に特殊で,近いのは唯一コバノヤバネゴケ C. microphylla だけである。この種は未採集であるが,‘茎の長さ 1-3mm’と‘葉細胞が「著しく厚壁」’の 2点で明瞭に否定できる。隠岐産の本種は大きくて 5-10mmにはなるし,細胞壁は「薄壁〜多少厚壁」という程度である。従ってイヤでも本種ということになってしまう。少々記載が合わなくても仕方がない。大体,希産種の記載は変位の幅を十分捉え切れてないことが多い(当然か)。しかし本種は,欧米にはいくらでもある広布種なので,その点は安心である。

非常に変異の多い(extremely variable)種のようで,今回の標本は以下の点で過去のものと違っていた。
 (1) 葉の背面に突起が全くない。
 (2) 枝の先の方の葉も常に全縁で鋸歯は出ない。
 (3) 葉身細胞は明瞭な薄壁でトリゴンもない。
 (4) 腹葉は舌状でほとんど分裂しない。
 (5) 無性芽が無い。
これはかなり気持が悪く,調べまわったら青森県恐山の標本についての記載(1962 N. Kitagawa)はまさにこのようになっていた。これが今回の発見である。ただし,(5) については「少ない(rather scarse)」。なお,無性芽はないこともあるし(触れてない文献がある),2細胞性だが 1細胞になることもある。

平凡社図鑑の記載と図は,八ヶ岳産の標本(1984 T. Furuki & H. Inoue)に基づくもので,変種 var. asperifolia とされていた型ではないかと思う。しかし,この変異は連続的で隠岐産の種でもそうなっている。

今回が 6度目の採集で,標高は 10m(集落内神社)〜 550m(隠岐では高山),隠岐諸島の 3つの島に亘っている。いよいよその存在を認めざるを得ないが,高度が低いことが何とも奇妙である(量の多さも)。550mは別としても他の箇所は全て100m以下である。高等植物で「隠岐では高度が下がる」とよく言われるが関係あるのだろうか。下北半島(恐山)で今思い出したが,オオエゾデンダという珍シダが北海道・下北半島・隠岐に分布している(北欧では普通種)。

以下は分った限りでの記録。標本は 1点限りが多いようだ。西暦年数のないものは古い。
/北海道 江差 & 昭和新山
/青森県 恐山(下北半島 200m) 1962 N.Kitagawa
/福島県 郡山市 (平凡社図鑑の写真) 1998
/長野県 横岳(八ヶ岳 2,700m) 1984 T.Furuki & H.Inoue
/神奈川県 箱根( 800m〜) 2006 T.Hiraoka et al.
/島根県 隠岐島( 550m) 1984 H.Inoue
/大阪府 金剛山(楠公墓付近 700m) H.Deguchi
/広島県 恐羅漢山( 1,346m) 1997 H.Deguchi


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 夏草の 身を襲ひ来る 青さかな       中島月笠
 夏草の おもひの丈と いふがあり      中原道夫
 夏草や 野島ヶ崎は 波ばかり        中村草田男


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