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丹後の日記

ホリカワトサカゴケ 2 Lophocolea horikawana編集する
2009年07月07日20:42全体に公開
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以前本種だとしていた標本は別のものではないかと思う。INOUE (1973) の図版と比較して,葉頂の円味が足らず少々角張っていることに気付いた。2歯が見える,あるいは切れ込みがはっきりある,といった葉が混じる。「葉頂がときに少しくぼむ」という記載に頼り過ぎたようだ。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=701791470&owner_id=2651499

今回の標本は花被がなく所属に自信が持てないので,図版を一つずつ見て行った。腹片がないことや,腹葉の特有な形からウロコゴケ科「ではないか?」と思ったが,「ではないか」という前提からではどうも真剣になれない。イギリスの苔類図鑑に科の検索表が出ていたので,これ幸いと使ってみたら簡単にウロコゴケ科に行き着いた。条件は,(1) 瓦状に葉がつく,(2) 腹片がない,(3) 腹葉が明瞭。イギリスと日本という違いはあるが,これを正しいと仮定して他の科を捨てた。

ウロコゴケ科内で問題になる属は,ウロコゴケ属 Heteroscyphus とフジウロコゴケ属 Chiloscyphus だけである。他の属ではあり得ないことは簡単に分る。Heteroscyphus については,標本の「雄花序が常に茎に頂生」しているので排除できる。葉が完全な全縁であることを言ってもよい。また,フジウロコゴケ C. polyanthos は水中性,スケバウロコゴケ C. pallescens の「雄苞葉は茎の途中につく」ので Chiloscyphus でもない。

よって Lophocolea の検索表をたどる。
 「B. 複葉は 1/2まで 2裂し,切れ込み部は弓形。」ではなく,
 「B. 複葉は 1/2より深く 2-4裂し,切れ込み部は V字形〜 U字形」である。
 「C. 複葉の幅は茎径と同じかより狭い。」・・・少なくとも「広い」とはとても言えない。

「C. 複葉の幅は茎径より広い。」と仮定すると,「D. 葉は円頭。」なので,エゾトサカゴケの可能性しか残らない。ところがエゾトサカゴケは「雄苞葉が茎の途中につく」ので,違うことが分る。以上で同定終りなのだが,あまり安心感がない。雄花ばっかりで雌花(花被)がついてないせいもある。標本がごく少量なのもよくない。

前記 INOUE によると,本種は「雄苞葉の背縁に数個の突起( 1細胞からなる)をもつ」。顕微鏡で調べてみると,確かに「粘液毛のような透明な細胞からなる突起」が並んで出ている場所がある。これは,かなり特殊な形質だと思われるが,頻繁に見られるわけではないので根気よく捜す必要がある。

また同書には油体は 4〜15個となっている。観察結果は,±6μmの楕円体が 2-5(7)個といったところで,数が少ないのが気になる。なお,乾くと一瞬のうちに油体が分解するので油断できない。こんなことも一つの特徴になるか。

もしも今回の結論が合っていれば,前回の標本は何だ?ということになる。かなりな難問と言うか,行く先がないような・・・。


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 十薬や 四つの花びら よごれざる       池内友次郎
 十薬に 日の載つてゐし にほひかな      千葉皓史
 十薬の 溝に這ひ寄る 暮色かな        久永雁水荘


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