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丹後の日記

エゾヒメヤバネゴケ Hygrobiella laxifolia編集する
2009年06月10日18:02全体に公開
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生長が十分でないのか,高さ 3mm,幅 0.7mmほどの小さなもので,何がどうなっているのかを知るのが容易ではない。双眼実体顕微鏡につくづく感謝。葉の先が深く 2裂するので苔類だろうとは思ったが,実は所属が分らなくて諦めかけていた。大体,葉が 2つに折畳まれていて,図版にあるようなU字溝状の葉には見えなかった。よくよく見て初めて,キールのないゆるやかなカーブらしいと気付いた。

側葉と腹葉が全く同じ,従って 3列に葉がついているように見える。これは本種の著しい特徴であるが,腹葉がないように見える(?)個体もあって気分がスカッとしない。ただ,葉が細長く(長さは幅の 2倍),鞭枝状の枝を盛んに出すので他のものではないだろう。葉のキールに翼があるニシムラヤバネゴケ H. nishimurae (西村先生採集)でもない。

平凡社の図鑑の図では,随分長い葉身細胞が書いてある。保育社も似たようなもの。確かによく生長した大きな葉ではこんな感じになることもあるが(ca.70*12μ),今回の採集標本ではもっと短くて幅広い(ca.50*20μ)細胞の葉が多かった。児玉務(1971)『近畿地方の苔類』と A.J.E.Smith(1990)『The Liverworts of Britain & Ireland』の図版ではそのようになっている。

側葉・腹葉ともに分裂の深さや裂片の形は「変異が著しい」そうなので要注意。形質の揺れを知らなかったために,初めての同定でつまづいたり何時までも曖昧さがつきまとったりすることがよくある。図鑑の記載に「油体は稀」となっているが,いくら捜しても見付からなかった。ところが,上記 Smith氏の図鑑に「油体を欠く(lacking)」となっていて気が楽になった。

他に,茎の切断面の図やその記載のある文献が多いことに気付いた。「ということは,重要なんだろう」と思い,切片を作ってみた。 大形(径ca.35μ)の細胞からなる表皮の 1層が茎を取巻き,内部には小形(径ca.12μ)で厚膜の細胞がぎっしりと詰っていた。

井上浩(1973)『日本産苔類図鑑』には,「わりに珍しい種であるが,・・・」とあって,北海道(礼文島・利尻島)・秋田・岩手・三重・島根・熊本に各 1ヶ所ずつ産地の●がついている。それ以外では,広島・鳥取・京都・神奈川・宮城に確実な記録があった。


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 何かして ゐねば老いゆく 薔薇の昼        吉田登子
 開きつつ 薔薇にもありぬ 羞恥心         原田青児
 ばら紅し 地獄の先は 何ならむ           油布五線

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