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丹後の日記

マイマイツボミゴケ Jungermannia torticalyx編集する
2009年05月26日14:55全体に公開
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以前間違えてハネツボミゴケ J. plagiochilacea を本種だと思ったことがある。その時に「やや硬いような透明感のある葉の質感,少し波打つような葉面が反り気味に平らに展開するところ,確かにハネゴケ属(Plagiochila)を思わせる。」と書いているが,その感じが今回の標本にもちゃんとある。常に水に濡れているような湿地性である点もよく似ている。

ただし,本種の特徴は油体にあると言われるように,油体が‘明瞭な’ブドウ房状である点がはっきり異なる。T.Amakawa (1959) の論文には油体による検索表があって驚く。そこにブドウ房状になるものは 4種挙げられているが,本種以外で可能性があると思ったのはサイシュウソロイゴケ J. koreana (ツムウロコゴケ J. fusiformis の異名)であった。

しかしJ. fusiformis には「葉は著しく大きな厚壁細胞で縁取られる」という特徴があって否定できる。これはありがたかった。花被の形が全然違う(亜属が別)のだが,まだできておらず確かめようがない。

形質は記載と合っているし(生殖器を除く)これで同定は終ってもよいのだが,「葉の付着線が長く直線的」であることが気に入らない。「仮根が少なくて透明」であることも多少気になる。これらは,チャツボミゴケ J. vulcanicola の特徴である。しかも,近くに(2km)に J. vulcanicola の産地がある。だけど,油体の感じがあまりにも違うし,眼点化する粒子もほとんど見られない。「とても同一種とは思えない」というのが今の結論である。

いずれにしても晩秋になったら,花被共々生きた状態で両者を並べて比較したい。これで,
Subgenus Plectcolea, Sect. Adesmorhiza, Flagellata Group に属する種が,
 マイマイツボミゴケ J. torticalyx,
 ハネツボミゴケ J. plagiochilacea,
 ハラツボミゴケ J. rotundata,
 オチツボミゴケ J. otiana,
 チャツボミゴケ J. vulcanicola
の 5種になった。いずれもあまり普通な種ではない。皆,水に濡れることや水のごく近くを好むのは奇妙。

なお,長い間日記を書かなかったがサボっていたわけではありません。採集も観察も続けているのだが,新しいものに出会わなくなったためである。

 〔追記〕
採集品の中に J. vulcanicola もあったので,2つを比較してみた。一般的に妥当することかどうかははっきりしない。外観では非常によく似ていて,どっちがどっちだか分からなくなりそう。

 J. torticalyx ⇒ J. vulcanicola
(1) 茎を含む幅 : 大きくて 3.5mm ⇒ 小さく 2.5mm
(2) 葉縁 : 反曲気味 ⇒ かすかに内曲(背側へ)
(3) 油体 : 尖り気味の楕円体±15*8μ ⇒ 1個の眼点に少数の微粒が付属
(4) 眼点 : 普通ない ⇒ 超巨大(φ9μ)なのがほぼ常にある
(5) トリゴン : 小さいが明瞭 ⇒ 全くない
(6) 細胞壁 : 薄壁ではあるが厚みを感じる ⇒ 見えないくらい薄い


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 えごの花 真盛りなる みどりかげ          高濱年尾
 小流れに こぼれ日の斑(ふ)と えごの花     吉年虹二
 蜂が尻 まるめて移る えごの花           杉浦惠子

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