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丹後の日記

ヤマトキヌタゴケ 2 Homomallium japonico-adnatum編集する
2009年04月01日16:33全体に公開
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以前にヤマトキヌタゴケとして日記に書いたものは,実際にはミヤマハイゴケ Eurohypnum leptothallum だったことに気付いた。そして,今回の標本は長い間エゾキヌタゴケ H. connexum に同定されていた。かなり手こずって結論には不満もあったのだが,ヤマトキヌタゴケという種がミヤマハイゴケに乗っ取られていたのでやむを得なかった。行き先がふさがっていたわけで,お気の毒な状況である。

めでたく本物のヤマトキヌタゴケに辿り着いたが,あまり満足感がない。エゾキヌタゴケとの差が少なく,違いがあまり明快ではないからである。同定を疑っているわけではないが,続けて観察する必要を感じる。ヤマトキヌタゴケの特徴は以下のようである(多分)。〔 〕内はエゾキヌタゴケ。

(1) 葉はややゆるくついて,乾くと斜上するが茎に接着はしない。 〔丸くつき,乾くと枝に接着してやや紐状になる。〕
(2) 葉身部は卵形〜狭卵形で,葉先はやや急に長く尖る。 〔卵形〜広卵形で,先は急に短く尖る。〕
(3) 葉の凹みと葉縁の反曲は弱め。 〔葉の中央が深く凹み,葉縁の広い反曲が顕著(broadly recurved)。〕
(4) 中肋は太く長い(1/2〜1/4)。 〔薄く短い(1/4)。〕
(5) 翼細胞は葉縁に沿って 15〜25個。 〔多数で 25〜35個。〕
(6) 葉身細胞は細長い菱形で 30-45×3-4μ。 〔線状楕円形で短く 15-30×4-6μ。〕
(7) やや湿った岩上や樹幹に生育。 〔低地のやや乾いた岩・石垣等。〕

2つの種を並べて比較すると確かに別種のように見える。そして,上記の形質の比較は全部当てはまる。ただ,「傾向としてははっきり」認められるが種を分かつ根拠としては十分でない。いずれの条件も程度の問題で重なる部分があるし,同一群落・同一個体内での変異も結構ある。

最終的には,(5) の翼細胞の数に関する条件のみが残った。本標本では15〜25で20を越えることは少ない。一方エゾキヌタゴケの方は25〜35といったところで,しばしば 30を越える。数に多少のばらつきはあるのだが,この差異を否定することはできない。これでやっと信用する気になった。

なお,野外で両種を区別するには (1)と (7)が役立つと思われる。顕微鏡下では (6)の対照も興味深い。また,アオギヌゴケ科などシトネゴケ目の小型種と混同して見逃しやすいが,ルーペでは (3)の‘葉が背側にぽっこりふくらむ’感じが着眼点になると思った。


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 連翹の はなちそめたる ひかりかな       久保田万太郎
 この年も 連翹かく咲き かく眩し          雑貨皐月
 連翹の 花に夕(ゆうべ)の まだ寒く       田中冬二


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