コンペイヘチマゴケ P. camptotrachela の集団中に数本混生していた。妙な生え方をするものだ。コンペイヘチマゴケとは,無性芽の形や大きさ,及び葉身細胞の幅(5-8μで狭過ぎ)が決定的に異なる。長くてねじれた無性芽をつけるので,他に可能性のある種はケヘチマゴケ P. flexuosa とホソエヘチマゴケ P. proligera の 2種に限られる。
以下の理由からホソエヘチマゴケではない。
(1) 無性芽先端の葉原基は 3個以上でそれぞれが多細胞からなる。「通常 2個でそれぞれ 1-2細胞からなる」は,はっきり否定できる。
(2) 無性芽は「おしぼり状」で,「細長い糸状」ではない。量も「溢れるようにどっさり」はついていない。
問題はケヘチマゴケとの違いである。あまり確信はないが以下の理由でケヘチマゴケではないと思った。
(1) 葉形が異なる。葉下部が多少ふくらみ(茎への)付着部で細くなって,卵状の曲線が感じられる。「線状披針形(細長い三角形)で付着部の幅が一番広い」ような葉は全く出てこない。
(2) 葉縁は完全に平らで反曲する傾向は見られない。
よく見るケヘチマゴケは,集落内から低山地にかけ,陽当たりがよく裸の土が現れた場所に群生する。そして〔朔〕をよくつけ,植物体はふつう黄色味を帯びる。ただ,陰湿な神社の庭などに,濃い緑色で〔朔〕を全くつけない型もあるように思う。今回のものは「日向型」のケヘチマゴケとは明らかに印象が異なるが,「日陰型」の生態をもっと調べてみる必要がある。
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今日はけふの さよならをいふ 落葉の木々 千代田葛彦
思ひ出や 桜落葉の 香を踏めば 西村和子
落葉ちる ただそれだけの 身のまわり 阿部完市