【 Tenny(テニー) 発想の背景 】

 現在の645一眼レフは、その全てがバッテリー/モーター駆動による自動合焦、自動巻上、自動露出制御機能を備えています。
 しかし、それらは 645 が抱える設計上の欠陥を補う対症療法として追加された仕組みであり、電源・駆動装置による重量と容積の増大を考え合わせれば、 必ずしも自動化以前の 645 に較べて操作性が向上したとはいえません。

 現在の 645 は、いわゆる縦と横という概念を持たない正方フォーマット専用のカメラ・デザイン(*注)を軽率に流用したために、 道具として備えているべき要件を満たさない 『 未完成のカメラ 』 であり、645 には 645 に適した本来の設計があるのではないかというのが考案の発端でした。

注:ビクター・ハッセルブラッド氏(スウェーデン)によって発明された 6・6 判一眼レフが、 半世紀以上にわたって基本的な設計変更を必要とせず、 また、カメラ市場において ペンタプリズム / アイレベル・ファインダー を備えた 6・6 判一眼レフの競合製品を凌駕してきたことは、 正方フォーマットとして合理的なカメラであることを示しています。


【 Tenny(テニー) の設計理念 】

 基本的な設計理念は、35mm一眼レフの操作感に近づけるために、カメラ本体の小型化とともに、 縦・横いずれのフレーミングにおいても、マニュアルによって一連の撮影操作が可能となることを目標としました。

 当初からマニュアルを念頭に置いたのは、できるだけ容積と重量を極小化することに加え、 基本的な撮影機能をマニュアルで違和感なく操作できることは道具として求められる最低限の要件であり、 バッテリー/モーター駆動による自動化機能とは高速化を優先する場合の選択的な仕組みであるべきだと考えたからです。
 おおよその外観設計をもとに、全反射プリズムとポロミラーとふたつのリレーレンズから構成される新たなファインダー光学系を考案し、 いくつかのモックアップによって操作感を確認した末に、最終的な設計仕様が Tenny(テニー) となって完成しました。

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